通常国家の出生図は、憲法の発布・施行日が分かっていればそれを基に作成するが、シリアの場合はこれまでに2回憲法改正が行われており、しかもそのうちの1回はシリア内戦発生後アサド政権側が定めたもので、反政府側や国際社会の承認は得られていない。
そこでここでは、春分図をアストロ・カートグラフィと云う手法で展開して、流れを追う手法をとることにした。
その結果、シリア情勢が良い方向に展開し始めるのは2019年以降であることが分かった。
ちなみに図の左から順に2016年、2017年、2018年、2019年の春分図のカートグラフィである。
今後の流れをチャートで追うと、2017年に1度好転しかけるが、翌年事態を覆すような出来事が起きて、結果的に御破算にされるのではないかと思う。
おそらく反発によるテロ事件等が起きるのだろう。この地域の異常気象や天災が、それに拍車をかける働きをするかもしれない。
2019年に好転に向かうといっても、一気に情勢が鎮静すると云うわけでは無い。
おそらくISなどイスラム過激派組織の残党やその他のイスラム過激派によるテロは頻発するだろうし、誰が政権をとるかの主導権争いや権力争いもあるだろう。
だがそうした過激派の攻勢も2021年頃には減少し、テロや内戦の痛手から立ち直るための戦略がとられることになるだろう。
シリア情勢が本格的に安定に向かうのは、改革の星・天王星が牡牛座に抜ける2022~23年ごろになりそうだ。
場合によっては、いくつかの国に分裂して安定に向かう可能性もあるし、軍事政権が誕生する可能性も無きにしも非ずだ。
当事者だけでは安定的な政治基盤を作れず、結局はシリアの同盟国もしくは有志連合か国連の支援を受けての再生スタートと云うことになりそうだ。
ではここで、ターニングポイントとなりそうな時期のシリアの春分図を見てみよう。
左が2019年の春分図。右が2021年の春分図だ。
どうやら有志連合や同盟国、国連の支援だけではイスラム過激派の残党たちの納得を得られず、事態が収拾できずに時間だけが過ぎていく形になりそうだ。
鍵はイスラム教各宗派の指導者たちが握っている。
彼らが各宗派と手を取り合い、事態の収拾に動けるかどうかでシリア再生の時期は変わってくるだろう。
ただ説教してIS(あるいはその他のイスラム過激派組織)はイスラムでは無いと批判してもダメなのだ。
分かりやすい言い方をすれば、ISその他の過激派組織を和平交渉のテーブルにつかせる事ができるのは、イスラム教の指導者たちだけと云うことが出来るだろう。
ということは、同盟国や国連がシリア情勢の沈静&安定のために効果的な支援策を講じるためには、イスラム教の各宗派の指導者たちに手を取り合うよう働きかけ、協力を仰ぐ必要があると云うことになる。
交渉は非常に注意深く、かつ慎重に行われることになるだろう。
イスラム過激派によるテロは非常に厄介な問題ではあるが、こうしてみるとイスラム教自体が宗派の考え方の違いを乗り越えられずに分裂し、自分たちの生活の安全や質の向上のために機能していないこと自体が、実は問題(中東にテロの火種が絶えない理由のひとつ)になっているとも言えるだろう。
イスラム指導者たちは、「過激派の主張は異端である。イスラム本来の考え方である、異教徒への寛容さを取り戻せ。」と、まずは宣言するべきだろう。
(2015年12月現在、そうした宣言は出されていないらしい。)
その上で政治的な課題は暴力ではなく、正当な手続きを経て解決する試みをするよう説得していくべきなのだろう。
ただしこれでシリア内戦が収まり、復興への道筋ができたとしても事は簡単に収まらない。
有志連合や国連が彼らの国づくりに対して口を出しすぎると、イスラムVS有志連合間での紛争が新たに起きかねない。そうなれば、おとなしくなりかけた過激派組織が、息を吹き返してしまうからだ。
大切なのは、シリア及びその周辺の地域の人々が望むような国づくりを支援することだ。
決して欧米の社会システムや思想の押し付けをしてはならないし、イスラム社会を欧米社会の従属物として扱うようなマネは、止めなければならない。
欧米側がそうした思考回路を捨てられなければ、イスラム過激派組織が、この地域を非人道的な形で支配する危険性を除去することは出来ないからだ。
シリア及びその周辺の地域の人々が望むような国づくりを支援した結果として、一時的に新しい国家(この地域)との外交や貿易が制限されるなど、やりにくくなることも考えられるが、まずはこの地域の安定を優先させるべきだろう。
これまでに記した試練を上手く乗り越えていければ、新しい国家、あるいはこの地域の政治情勢が安定してきて、2026年以降には外交や貿易関係も多少のいざこざがあっても好転し、新しい外交・貿易システムが構築されることになりそうだ。